コンパス〜いつもそばで〜


「なぁ」

タカシがふいに話しかける。


「ん?」

「連絡しろよ?」

「誰に?」

「だから、前田さんに。心配してたぞ、お前のこと」

「あー、うん」

手紙からでも心配してるって伝わってきてたから、それは知ってるんだけど


「けど、連絡先、知らないしな」

何も知らないんだ。
彼女の今を、何も知らない。


「えっ?! マジで?」

「あぁ」

彼女とは、練習場に彼女が来てないと会えないし、話せないんだ。


「ったく、何やってんだよ」


タカシの声が虚しく車の中に響いた―――……


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