コンパス〜いつもそばで〜
「宮、下……くん」
16番を背中につけ、白いユニフォーム姿でピッチを駆けているのは、宮下秀之。
足は?
もう大丈夫なの?
そんな心配をよそに、彼はセンターライン付近で後ろから縦に入ってきたボールを受けると、狭いディフェンスの間をドリブルで突破する。
歓声が上がる。
彼の小刻みな、ボールが足から離れない独特のドリブルは、その声援に応えるかのように勢いをつける。
「行け……」
このまま行け
ゴールへ突き進め
いつか見た、あの日の球技大会の時のように、ゴールネットにボールを突き刺して、彼の笑顔が見てみたい。
いつの間にか、握り締めた手に汗をかいている自分がいた。