コンパス〜いつもそばで〜
「なぁ」
「ん?」
「この後、買い物行かん?」
タカシがカレーを頬張りながら聞いてきた。
「ん?」
「寒くなる前に防寒着とか買い揃えたいしな〜。な?どう?」
俺が調子悪いのを分かっていて気分転換に買い物でも。って考えてくれているんだろう。
でも、今は、買い物って気分じゃない。
どちらかといえば、一人でじっくり考えたい。
「それとも、温泉で久しぶりに語り合う?」
どちらかが落ち込んだり上手くいかない時は、いつも二人で語り合ってきたから。
一人で悶々と考えて出てくる答えより、二人で語り合って出す答えの方が前向きになれるって分かってるから
「んー、じゃあ、」
温泉でも行くか
って言おうとした時、“チリンチリン”とドアベルが鳴り、何故か話すのを止めた。
別に止める必要なんてないのに、何故か視線は店へ入ってきた人を捕らえていた。
同い年くらいだろうか。
学生っぽい男が一人、俺たちのテーブルの隣の席についた。