コンパス〜いつもそばで〜
「カレーセット」
そう言った彼に、
「ごめんなさいねぇ。昼のカレーは終了しちゃったのよ〜。他ならあるんだけど」
申し訳なさそうに答えるおかみさんの声に、ふと、黒板を見ると、
≪昼のカレー終了しました≫
の文字。
もう、夜の仕込みに入っているんだろう。
そんな二人の会話に、なんとなく残り少ない自分の皿のカレーを食べるのを遠慮して手が止まる。
そんな俺の気持ちなんて知らずに、
「あ〜、旨かった」
と、最後の一口のカレーを食べ終えたタカシは、
「ここのケーキセットも滅茶上手いよ〜」
なんて、隣の客に営業を始める。
「俺、ガトーショコラとオレンジジュースね。おたくは何にする?」
追加注文をし、隣の客のオーダーまで聞いている。
「あっ、じゃあ、チーズケーキとコーヒーで」
「了解。おかみさん、よろしく〜」
何故か一緒に頼むタカシに呆れてしまう。