コンパス〜いつもそばで〜



「カレーセット」

そう言った彼に、

「ごめんなさいねぇ。昼のカレーは終了しちゃったのよ〜。他ならあるんだけど」


申し訳なさそうに答えるおかみさんの声に、ふと、黒板を見ると、

≪昼のカレー終了しました≫

の文字。


もう、夜の仕込みに入っているんだろう。



そんな二人の会話に、なんとなく残り少ない自分の皿のカレーを食べるのを遠慮して手が止まる。

そんな俺の気持ちなんて知らずに、


「あ〜、旨かった」

と、最後の一口のカレーを食べ終えたタカシは、


「ここのケーキセットも滅茶上手いよ〜」

なんて、隣の客に営業を始める。


「俺、ガトーショコラとオレンジジュースね。おたくは何にする?」


追加注文をし、隣の客のオーダーまで聞いている。


「あっ、じゃあ、チーズケーキとコーヒーで」

「了解。おかみさん、よろしく〜」


何故か一緒に頼むタカシに呆れてしまう。

< 131 / 184 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop