コンパス〜いつもそばで〜
ふと、翌日の講義は午前で終わることに気付いた。
その次の日の木曜日は、心理学だけ。これは、来週の月曜の午後に取り直せばいいから……
よし、そうしよう。
明日帰って、一泊しよう。
「お母さん、明日、帰るわ」
『ん?』
「美味しいご飯食べたいし」
お母さんにしか作れない美味しいご飯も食べたいし。
もう二十歳になるんだから、母の味もしっかり伝授してもらわなきゃ。
『待ってる』
その一言だけだったけれど、嬉しそうな弾むようなその声に、電話の向こうの母の顔が、満面の笑顔であると容易に想像できた。