コンパス〜いつもそばで〜
――…
“プシュー……――”
電車を降りると、清んだ空気に無意識に大きく息を吸い込んだ。
小さな田舎町
都会に比べたら、何かと不便なこの町を、それでも愛おしいのは、ここが自分の町だから。生まれ育った町だから。
改札口を通り駅を出て、家に帰ろうと歩いていたら、見慣れた母校の制服を着た女子高生の集団とすれ違った。
ふと時計を見れば、針は、午後4時を指していた。
そっか、もう学校も終わってるんだ。
なんとなく、あの場所に行きたくなった。
この目でもう一度見たくなった。
あの頃、共に過ごした場所で
今、あの場所で、私は何を感じるのだろうか……
そう思ったら、足は、家ではなく、高校へと向かっていた。