コンパス〜いつもそばで〜
「じゃあな、グッチせんせ」
「先生ー、また明日」
「あぁ、気を付けて帰れよ」
昇降口付近でそんな会話が聞こえたかと思うと、男子生徒二人が一人の教師に軽く手を振って、校門へと歩いてくる。
そんな彼等の背中を見つめていた先生が、ふと、こちらに気付き
「前田?」
私の名を呼んだ。
校舎の影に隠れていて顔がよく見えないその先生が、ゆっくりと光の射す場へ姿を見せると、
「西口先生!」
思わず大きな声を出してしまう。
そこにいたのは、高校三年間、担任としてお世話になった体育科の西口先生だった。