コンパス〜いつもそばで〜
「報告してないの?」

「ん?」

「合格の報告」

「……うん」

まだ出来ていない。

“頑張れ”って背中押してもらった人なのに

本当なら、一番に知らせなきゃいけない相手なのに。一番に知って欲しい人なのに。

なのに、報告できてないなんて、何やっているんだろう、私。



「だから連絡先書いとかなきゃいけないって言ったでしょ」

ふぅっ、と溜め息をこぼす沙耶に

「……ごめん」

としか言えなくて、本当、自分が情けなくなってきた。



「明日美」

俯いた私を慰めるように声をかける沙耶に、顔を上げたら、

「明日、一緒にいく?」

仕方ないから付き合ってあげるよ。って言ってくれるから心強くなる。


「見てみたいしね〜。目の前で、明日美の好きな彼を。
あっ、好きにはならないから安心して」

笑ってそう言う沙耶に

「ありがと」

と返事をした。


この話はおしまい。って沙耶が言ったと同時、まるで、このタイミングを待っていたかのように、果物が沢山乗ったタルト二皿とコーヒーが運ばれてきた。


「お誕生日おめでとう!さっ、食べよ」

「ありがと〜」


果物のタルトは、甘さ控えめのカスタードクリームが果物の甘さを引き立てていて、とても美味しかった。

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