コンパス〜いつもそばで〜
――――……

「っ……」


思わず息をのんだ。

スタジアムの中は、日常生活の場とは別世界。
夢の世界っていうのは大袈裟だけど、不思議なここだけの世界がある。


目の前にひろがる緑のピッチは手入れが施されていて、この場所で、あと２時間もすれば、熱い戦いが始まるんだと思うとドキドキした。


ゴール裏には、多くの旗に橙色のユニフォームを着た多くのサポーターの姿

スタジアムぐるりと、選手の名前の横断幕の多さに驚いた。




「明日美〜！こっち、こっち〜」

沙耶の声に、はっと我に返ると、ホームベンチ側の前から３番目の席の前で、コウくんと一緒に沙耶が手を振って、席はここだと教えてくれた。


「あ、うんっ」

聞こえるかどうか分からないくらい小さく返事をし、手を軽く挙げて彼女たちの元へといく。


「フードパーキング行くけど明日美どうする？」

「うーん、後で行くわ」


今は、まだ、もう少しだけこの雰囲気を楽しみたい。

夕日が沈んで夕焼け空のオレンジ色の先から少しずつ紫がかって暗がりが広がろうとする空と、照明に照らされた青々とした芝のピッチ

スタジアム独特の雰囲気が心地いいから。


「じゃ、後でね」

そう言って沙耶たちが出かけて行った。
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