コンパス〜いつもそばで〜
「……っと。これでよしっ!サンキュー」
そう言ってニヤリと笑ったタカシは、
「早く耳にあてないと、前田さん、出るぞっ」
そう言って、奪った携帯を俺の耳にあて、
「じゃ、終わったら電話して」
そう言って、自分の携帯を自分のズボンのポケットから取り出して、じゃあな。とクラブハウスの中へと駆けて行った。
「えっ?おいっ!ちょっ……!」
ハメられた。
ふぅ……覚悟決めなきゃな。
改めて耳にあて、一回…二回…三回…
四回目のコールの途中
『もしもし?』
前田の声が、間近に聞こえる。
「……もしもし、俺。宮下」
こんな言い方で分かってくれるだろうか。
オレオレ詐欺みたいじゃないか?
『え?……宮、下……くん?』
気付いてくれた
恐る恐るだけど、ちゃんと俺の名前を言ってくれた。
『うん。……ごめん、突然で。驚いた?』
だから、伝えよう。
今の俺の素直な気持ちを。