コンパス〜いつもそばで〜
『前田?』
「うん?」
『……っ、やっぱ、何でもない』
「何よそれ」
気になるじゃない。
『ん?……さんきゅーな、前田』
宮下くんの“さんきゅー”に胸が熱くなるのは、なんでだろう。
胸が苦しくなるのは、なんでだろう。
涙が出そうになるのは、なんでだろう。
“ゴールおめでとう”
に対してのさんきゅーじゃなく、なんか、もっと深い意味があるように思えてならない。
今、宮下くんも同じ気持ちならば、あの頃に繋がっている。そんな気がするのです。
だから
「宮下くん……」
いっぱい言いたいことあるのに、言葉が続かない。
『前田?』
優しい声で私の名を呼ぶその声は、あの頃と変わらないのに、あなたは、あの頃の夢に向かって、着実に一歩ずつ歩んでいる。
そう思ったら、やっぱり涙が出そうになった。