コンパス〜いつもそばで〜
「……でもさ、やっぱ寂しーな」
「宮下、くん?」
柔らかい春の日が射す教室の窓辺からグラウンドを眺める彼に、つられるように窓の外を眺めると、グラウンドの隅には、まだ咲きそうもない桜の木が立っている。
桜の花が咲く頃には、もう隣に彼はいない。
もう、こうやって話すことも学校で会うことも、隣の席で爆睡している寝顔を見ることも、もう、ないんだ。
「ここがさ、俺の居場所だった」
「……うん」
「向こう行っても、前田みたいな奴居ねーし。けど、夢のためだもんな」
頑張るしかないか
そう言った彼に、エールを送ろう。
「頑張れ」
「前田?」
「大丈夫だよ。宮下くんなら、大丈夫。
うん……。きっと、私みたいにノート取ってくれる人いるって」