コンパス〜いつもそばで〜
彼女に対して、好きって感情もなかったんだろう。
きっと、俺も、ただなんとなく付き合っただけで、特別な感情なんてなかったんだ。
思えば、好きって感情がどういうものなのか、彼女といても分からなかった。
好きって感情が分からない。
いや、一度だけ、苦しいくらいにどうしようもない感情になった子がいた。
高校一年の時、隣の席に座っていた子。
もう、顔も名前さえも覚えていないけれど、けれど、あの頃、俺はその子に特別な感情を持っていたんだと思う。
彼女が笑うと、こっちまで嬉しくて、いつまでも彼女の笑顔を見ていたかった。
俺が今、ここでこうやってサッカーを続けていられるのは、彼女の言葉があったから
『100回やって駄目でも101回目は成功することもある。諦めたら、そこで終わりなんだ』
彼女の言葉が俺を救ってくれたんだ―――…