コンパス〜いつもそばで〜
居残り練習を終え、へとへとになり、帰りの電車の中では、疲れていたのか、いつの間にか眠っていた。
学校からアパートまで快速電車に乗って30分ほど。
いつも、ウトウトすることはあっても、絶対に自分が降りる駅手前では目が覚めるのに、今日は、疲れていたのか、ハッと気づくと、聞き覚えのない駅名のアナウンスが流れていた。
ヤバっ、乗り過ごした!
慌てて次の停車駅で降りた。
見たことのない景色に焦りながらも、ここがどの辺りなのか、ホーム中央にある駅案内板で確認してみる。
「え〜っと……」
快速電車では、いつも降りる駅から一つ先へ行った場所だった。
そんなに乗り過ごしていなかったことにほっとして、家に帰ろうと、反対側方向の電車に乗ろうと一歩足を踏み出した時、この駅の一駅先の駅名が目に入った。
「駒ヶ池……」
そこは、彼のいるクラブハウスがある場所。
彼がプロとして必死に頑張っている場所。
“シュー―――……”
目の前にアパートへ戻るのではなく、この先へと行く各駅停車が入って来た。
行ってみよう
何故そう思ったのか分からない。
だけど、足は、自然と彼がいる場所へと向かっていた――…