コンパス〜いつもそばで〜
≪宮下秀之≫
「前田だよな?城北高で一緒だった、前田明日美」
確認すると、驚いたようにパチリと瞬きをした彼女は、キョトンとした顔を見せた。
もしかして、人違い?
「前、田?」
もう一度、恐る恐るその名前を呼ぶ。
「あ、うん」
「俺のこと、……覚えてる?」
こくりと頷いた彼女に安堵の息が洩れた。
よかった
また、会えた
「よかった」
ほっと無意識で吐き出した言葉に反応するように、目の前の彼女が笑った。
その笑顔は四年前と同じ。
握手を交わしたあの日から探してた。
あの時、すぐに思い出せなかったことをずっと後悔していた。
すぐに気付くべきだったのに。
気づいた時には遅くて、もう、そこに彼女は居なかった。
どうして思い出せなかったんだろう。
何故、覚えていなかったんだろう。
後悔した。
彼女の言葉が、今の俺を支えているというのに―――…