コンパス〜いつもそばで〜
実家に帰ってきたからといって、何をすることもなく、ただ部屋でぼぉ〜と過ごす日々が続いた。
「やることないなら、手伝って」
母親にそう言われ、物置小屋へ行くと、
「いるものといらないものに分けて」
と、目の前に置かれたものは、懐かしい玩具や学校で作った作品たち。
「いや……全部いらないけど?」
がらくたの数々を手に取りながら答えた時、ノートのようなものが束になって紐で結んであるのが目に留まった。
何かに誘われるように紐解いて中を見ると、綺麗な字が飛び込んできた。
「もう〜、せっかく纏めたのに」
母親の文句を聞きながら、その字を追っていく。
ルーズリーフに書かれているのは、数学か何かか。
そうして三枚目の下の方に
『いつもサッカーお疲れさま』
と綺麗な字が語っていた。