コンパス〜いつもそばで〜
「いいよ」
何に書こうかと聞くので、何も考えていなかった私は、何かないか探す。
サイン貰おうなんて思って来てなかったので色紙も何もない。
ポケットに手を入れ、取り出したのは、今日使っていたハンカチ。
「これに書いて」
鞄から筆箱を出し、サインぺンを取り出し彼に渡す。
「前田は、ほんっと、適当〜」
笑いながらそう言う彼に
「そんなことないって」
と言い返すけれど、説得力なんて全くない。
でもね、ハンカチが一番いいかな?って思ったのは確かなんだから。
スケジュール帳に書いて貰うのは何か違うような気がしたし、お守り代わりに持てるものって考えたら、これかな?って思ったの。
「まっ、そこが前田らしいけど。ちょっと引っ張ってて」
クスクス笑いながら、ハンカチを引っ張ってと指示しながらハンカチの下部を片手で引っ張る彼に、慌てて上の両端を引っ張ると、ピンっと張った状態のそれに慣れた手つきで、宮下くんはサラサラとサインをしてくれた。