コンパス〜いつもそばで〜
日曜日、コウくんの車で試合会場まで向かう。
「楽しみだね〜」
助手席ではしゃぐ沙耶の声に
「うん」
と軽く返事をして窓の外を眺めた。
「前田は、サッカーとか観る派?」
運転しながらコウくんが話しかけてくる。
私に話すんじゃなくて隣に座ってる沙耶に話せばいいのに。
折角、もっと仲良くなるチャンスなのに、何やってんだか。
「観るよ。サムライジャパンは観てる」
「俺もっ!日本代表だけしか観てないんだけどね。沙耶は?」
「ん〜、興味ない」
会話終了
もうっ。コウくん、沙耶が興味ないのなんて分かってる話でしょ!
もっと違う話しなきゃ。
「梶野くんってサッカーしてるんだね」
沙耶が食い付く話が思い浮かばなくて、つい、梶野くんの名前を出してしまった。
「そっ。俺らの大学のサッカー部はそんなに強くはないんだけどさ、梶野は別格。だから、今日も選抜チームに選ばれたんだ」
「選抜チーム?」
「うん。学生選抜チーム」
「へぇ!梶野くんって凄いんだね!」
沙耶が目をキラキラさせて話に入ってきた。