コンパス〜いつもそばで〜

だけどね、
やっぱり“怪我”って聞くと心配になるよ



怪我をした自分のプレーを悔やんでいるんじゃないか

自分で自分を責めているんじゃないか

誰にも見せることない悔し涙を流しているんじゃないか

焦って無理して練習をしようとしているんじゃないか



四年前、高校の屋上で見た、泣きそうな背中を思い出す

世界に敗れて、自分の力不足だと、悔しそうに顔を歪ませ静かに流した涙を思い出す


あなたは今、そんな姿を見せていませんか?





「行かなきゃ」


誰に言うでもなく吐き出した言葉。

行って、会って
何が出来るわけでもないけれど、ただただ心配で、彼の顔を見たくなった。



「ちょっ!明日美っ」

駅に向かおうと足を動かした私の腕をぐいっと引っ張って止めた沙耶と視線が絡む。


「行ってどうするの?」

先ほどの電話の内容は沙耶にも聞こえていたらしい。

「……分かんない」

「行ったところで、明日美に何が出来るの?」

「そんなこと……」


何も出来ないって分かってる。

彼にはトレーナーだって付いてる。
今、彼に必要なのは私じゃなくて、トレーナーだって分かってる。

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