【短編】7
めんどくさそうに、だけど爽やかに、サチは振り向いた。
水が、雫になってサチの髪からこぼれた。

「なに?」

唇が、重かった。


「俺、明日から水城と帰るから」

「は?」


本当は帰る約束どころか、まだ返事すらしてないけど、俺はサチと無理やり離れることを決心していた。

サチは間抜けなほどに口を開けたままで、だけど「なんで」とか「どうして」といったコトを繰り返し尋ねてきた。
それを俺は、冷たくあしらった。

その日はサチと帰ろうと思ったのに、もう、帰れる雰囲気じゃなかった。

この日は何もやる気が起きないまま、家に帰った。


明後日までにサチを忘れよう。
忘れてしまえば、楽になる気がする。


明後日からは水城と帰ろう。
水城には悪いけど、サチを忘れるために協力して貰おう。


サチに壁を感じられるのは、一番イヤだから。



サチ、
サチ、
サチ、
サチ………。


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