【短編】7
「『今』はいないけど、『今すぐ』できるかもしれないよ?」


「え?」

ハルの泣きそうな暗い顔が、私の口を閉ざしそうになった。

ねぇ、ハル……。
そんな顔しないで。


「ここにいたって、人を好きになることはできるんだから」

私の言葉に、ハルは気がつかない。
他人のことにはあんなに敏感なのに。

「……病室のぞいたりする患者さん?
担当の先生?
看護士さん?」


どれも的外れで、がっかりする。
だけど、ハルだから仕方ない。


私が好きになった人だから、簡単にわかったら困る。
面白みに欠ける。


「ハルはいないの?好きな人。
友達のことばっかりじゃない」

「僕はいいんだ。
そんな資格ないよ」

その言葉に腹が立ったけど、同時に悔しくなった。

私はハルキにそっとキスをした。


「私はハルが好きだよ。
私はハルを好きになってはいけなかった?」



ハルが、初めて私の前で泣いた瞬間だった。


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