【短編】7
そんな彼女が金森太一に告白したと知ったとき、自分の気持ちを知らせてはならないと思った。

『好きな人の幸せがオレの幸せ』と思おうとした。

それは難しいことだったけど、それでも彼女の気持ちに水を差しちゃいけない。
そう感じたから、オレは黙っていた。

水城の脇で土谷が「上手くいくといいね」とか「カコは面食いだったんだね」だとか言っていた。

だけど、オレはすごく汚くてイヤな奴だった。


『フラれればいい』

そんなふうに、心底思っていたから。




自分は気持ちを隠して、相手が泣きついてくるのを待っている。

なんて、嫌な人間なんだろう。


こんなオレを水城は好きでいてくれるだろうか?



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