ミルクの追憶
「さぁ、それは確かめてみないことにはね」
クロエの意図をよみとって、二コラは愉快そうに笑う。
「確かめるって、どうやって?」
「いいかい、クロエ。ぼくの言うこと、信じられる?」
「あなたの言うことなら、わたしは何だって信じるわ」
そう言ってクロエが二コラの首に腕を回してキスすると、二コラは愛おしそうに彼女を見つめた。
「ここにね、あるんだよ」
「……あるって、なにが?」
「もうひとつのヴァイオリンさ」
クロエが二度瞬きをして二コラの言葉の意味を理解する合間に、二コラは後ろ手に隠していたそれを彼女の目の前に差し出した。
――これがその、魔のヴァイオリンさ。