ミルクの追憶
泣きながら謝る少年。
少女は首を傾げながらも、泣いている彼が愛しくなってその黒髪を優しく撫でた。
「大丈夫、大丈夫だよ」
「あいしてる」
「え?」
「あいしてるんだ」
少年ははっきりとそう口にして顔をあげた。
灰色の瞳が憂いに濡れて、少女をしっかりと見つめている。
「わ、たし……」
少女はゆっくりと彼の頬を片手で包み、胸の奥から熱いものがこみ上げるのを感じた。
名前さえ思い出せなくとも、少年にことを心のどこかで知っているような気がして。
「わたし、」
言いかけた瞬間、少女の唇に柔らかくて熱いものが触れた――キスだった。
ミルクまみれで甘かった彼女の咥内は、彼の涙でしょっぱくなる。
「あいしてる、あいしてるよ」
「、……コラ」
「……え?」
「ニコ、ラ」
少女の口からその名が紡がれたことに驚いて少年は唇を離した。