恋はいっぽから!
「あ~、超ウケる!」
ケタケタと声を上げて。
親友、莉奈ちゃんが私の肩を叩く。
「笑い事じゃあないわ。おかげでホラ、見て。」
廊下ですれ違う生徒達が、明らかにこっちを見ては…
指をさしたり、
笑いを堪えたり、
…爆笑したり。
「………おかげで今日から私、有名人。」
「アハハっ、今更?」
……。『今更』?
どういう意味かしら…?
三船 一歩、17歳。
私の好きな事は。
本を読むこと、
お笑い、
イラスト描くこと、
歌を歌うこと。
「……ふふっ…、一つお披露目してしまったわね。」
現在のテーマソングは、〇KB4〇の『フラ〇ング 〇ット』。
何故この曲かって?
そうね、
それは……。
「……あ、ニシハル♪」
「………!」
ドキン…!
莉奈ちゃんがその名を呼び上げた瞬間に。
私の心臓が…跳びはねる。
「…お前ら随分とまあ派手にやらかしたな。」
数学担当、イケメン教師…仁志 日陽(ニシ ハルアキ)こと「ニシハル」が、笑いを堪えながら…、足を止めた。
「え。私は何にもしてないです!」
「いや、お前の声もバッチリ聞こえてた。」
「…マジっすか……。」
ショックを隠せない様子の莉奈ちゃん。
一方の私は……。
「おはようございます。」
「………。おはよう…って、もう昼だけど。」
極めて冷静に……
挨拶を交わす。
「……先生も聞いて下さっていたのですね。」
……してやったり、だわ。
「は?てか、校内放送だし。嫌でも聞こえるっての。」
……『嫌でも』?
「……先生は、どう思いました?」
私は……
ニシハルを真っ直ぐに見つめる。
「………どうって…。」
困ってるわ、
戸惑っているわ。
「……どうでしたか?私の美声。」
「微妙。(即答)」
……って、ちがーう!!
そんなことを聞きたい訳じゃないのに…。
(しかも『微妙』ときたわ)