恋はいっぽから!



私はソレを胸に抱えて。



勢いよく玄関のドアを開けると……。








「……5分前!!」





仁王立ちした宏輔が…


携帯片手に待ち構えていた。







「…ちっ…。守りやがった。」



「……ただいま…。」





ごめんなさい、宏輔。



今はあなたの小言は…受け流させて下さい。




私のアタマの中にまだこだまする、先生の声を……


掻き消したくないのです。





「一歩、夕食はまだだろう?今日はすごいごちそ…」


「食べたのでいいです!」





「…え…、もう?…って、一歩~?」




背中に呼び掛ける宏輔の声を遮るように……



私は自室のドアをバタンっと閉める。





それから。





その場にしゃがみ込んで……。





先生から受けとったソレをじっと見つめる。




「…………。」




丁寧に丁寧に……



その包装を剥がして。



見えてきたのは、細長い箱。







「………。」





そっと開けてみると……。






そこには。





「………ネックレス…。」




小さな石が嵌め込まれた……


ネックレス。






「……帰り際に渡すなんて……。キザだわ。」




けれどやっぱり嬉しくて……。





目頭に熱いものが…込み上げる。





「これ……、ひょっとして…。」





私は部屋の明かりの下に……


ソレを掲げる。





キラキラと光を反射するそれは………。




「…もしや…、ダイヤ…?」






三船一歩、4月5日生まれの17歳……。




誕生石は……





ダイヤ。






「……いつの間に…知ったのかしら。」







< 621 / 1,065 >

この作品をシェア

pagetop