恋はいっぽから!
私と莉奈ちゃんを高い位置から見下ろすのは……。
「あら。高津くん。」
高津 奏哉(ソウヤ)。
おそらく、私のことを2番目に理解してくれている…
中学時代からの、友人。
(ニシハル捜査協力者でもあります。)
「俺の母親、保育士してっからさ。」
あら……、初耳。
それは興味深い話だわ。
「ぜひ、お母様譲りの美声で、莉奈ちゃんに3番を歌ってあげて欲しいわ。」
「…あほ、歌えるか!」
彼は私の頭をペチンっと叩いた。
中学時代は、よく二人でこんなやりとりをしていたっけ。
ボケ(私)とツッコミ(高津くん)で、文化祭のステージをお笑いで盛り上げたことは……
今となっては、懐かしい。
3人で……
しばらくその話題で盛り上がる。
すると……。
「今日の日直っていっぽだよね?さっきニシハル呼んでたから…後で行ってみてね。」
クラスメイトに、そう声を掛けられた。
「……げ。」
『ニシハル』のキーワードに、
私はドキっとし、
莉奈ちゃんはうらめしそうに私を見つめ、
そしてなぜか…、
「つーか、最近三船、あいつと仲良くね?」
苛立つ…高津くん。
「…残念だけど。致し方なく話してるだけよ?」
莉奈ちゃんの視線をチラチラと気にしながら……
ドライに答える。
「莉奈ちゃんが日直ってことにしたらどうかしら?」
「…アホ。ニシハルにばれなくとも、担任にバレるっつーの。」
「……。それもそうね。」
私はしぶしぶと席を立つと…、
黒板の文字を見て、はた、と気づく。
「……残念なお知らせがあります。」
「「………?」」
「…本日日直の佐藤くんは欠席なので…。出席番号でいくと、高津くん、アナタが私のパートナーのようね。」
「………げっ。」
「……じゃあ…、参りましょうか。」
「行ってらっしゃ~い!」
半ば強制的に。
私は高津くんを引っ張る。
なぜなら……
一人で、ニシハルに会いに行くには……
勇気がいるから。