恋はいっぽから!
玄関前のロビーでは、既に先生が待ち構えていた。
「…おま…、何だよ、その薄着っ。」
先生は私の上から下までをじっくり眺めて……
はあっとため息つく。
「………。しかもまたチョンマゲか。」
「え?『また』?」
「まあいーけどさ。お前は急な呼び出しかけると…、案外無防備なカッコしてくるよなぁ…。まあ、サンダルじゃないだけいーけど。」
「…………!」
「冬にサンダルはねーよな。」
先生は…ちゃんと覚えているのね。
もうてっきり…葬られた記憶かと思ってた。
「……外は結構寒い。とりあえず、これも着ておけ。」
彼はそう言って、
あの時ジャケットを貸してくれた時のように……
私の体に、彼のジャージを被せる。
「……あの……」
「…急ごう、ちょうどいいタイミングだ。」
先生は迷いなく私の手をとると……
そのまま、玄関の外へと…飛び出す。
「……先生…、どこに行くんですか?」
「…………。秘密。」
薄暗い草原の中を、ずんずん進んで……
時折、確認するかのように……私に振り返る。
繋いだ手。
……熱い。
とかとかと心臓の音が、うるさいわ………。
「………よし、間に合った……!」
「……え……?」
辿り着いたのは…、
昨日の朝、私がやって来た……絶景ポイント。
まだ目の覚めない町並みが、視界一面に…広がっていた。
「………。あの…、なぜここに…?」
「昨日…、お前がここに来る前に、俺もここに来たんだ。」
「…!先生も…?」
「ああ。こういう風景見るの…好きでさ。」
「……私もです…。」
「妙な所、気が合うな。」
「…………。」
今更ながらの共通点…。
もっと早く知り得ていれば……
もっともっと、共有できた思いが…あったかもしれない。
今はそれが、
ちょっとだけ……切ない。
「………。面白い物が見れる。ホラ……、見てろよ?」