恋はいっぽから!
先生が指をさしたその方角が、
ぼんやりと……
光を帯びていく。
「………………。」
やがてそれは……
ゆっくりと、ゆっくりと……
薄暗い街を明るく照らし…
眩しい光を放ちながら、
雄大な空へと……昇っていくのだった。
街が……、目を覚ましていく……。
「………。綺麗……。」
気づけば、私や先生の姿も……全てが明るみになって。
きっとさっきまでは隠せていたであろう顔のほてりが……妙に気になり始めた。
けれど先生は……
じっと朝日が昇るのを見つめたまま、
こっちを見ることは……ない。
茶色の瞳に、キラキラとした光が揺らめいて。
それが……すごく綺麗だった。
「……見ないと…もったいねーよなぁ?」
「……はい。」
「キャンプファイヤーの灯も綺麗だけど、これも……負けてないだろ?」
「……はい!」
「……なんとなく…、お前に見せたいって思った。病み上がりなのに無理させて…悪かったな。」
「…………。先生、」
「ん~?」
「…ありがとうございました、私を連れ出してくれて。」
「…………。」
「……『先生』との思い出が…、ひとつ増えました。」
「…………そうだな。」
「ねえ、先生。」
「ん?」
「……私は…少しでも先生の人生の中で、あなたを照らすことは…できたのでしょうか?」
「…………?」
「私、先生には幸せになってもらいたいんです。私じゃ力不足でどうにもできませんでしたが…、今後、この先も…こんな風に幸せそうに笑っていて欲しいって思うんです。」
「…………。」
「…ずっと言いたかったのに…言えませんでした。『ありがとう』って言ったら、何もかも終わりな気がして……。」
「…………うん。」
「先生は私とのことを、ほんの少しでも覚えていてくれた。今はそれが…すごく嬉しいんです。」
「………。」
チョンマゲにサンダル……。
あの、冬の日…
私に会いに来てくれた時。
ずっとそれが…永遠に続けばいいと思っていた。