恋はいっぽから!
極寒の最中………。
「……ああ…、なんたる寒さ……!そうだわ…、マッチ…、マッチに火を……!」
しゅぼっ……
「…ああ…、あったかい……。」
町民が…震えたつ少女のすぐ側を、足早に歩いて行く。
誰も…少女のその存在を気にも留める者はいない。
かじかむ指先で、少女は次々とマッチに火を灯し…
その小さな炎で身も心も温めていた。
「………って…。一歩!ライターの無駄使いするな。こんな人込みで危ないだろう……!」
「……おや?気にかけてくれる町民が約1名。」
「……?なんの話だ、何の!」
「『マッチ売りのいっぽ』です。」
「……お前…、大丈夫か?」
「だって宏輔……!!こんなに寒い真冬の空に凍える者がいるというのに…誰も気にかけてくれないのだもの!」
「…アホか!ここにいる人が他人を気にする余裕などあるか!つーか、ライターいつの間に盗ったんだよ…返してもらうからなー。」
そう言って、過保護な従兄弟、宏輔は……
私の手から、ライターを奪った。
2月中旬のこの日。
現在、私達が訪れているのは………
某大学の構内。
合格発表の日を…迎えていた。
「寒さで震えがとまらないわ……!!」
「それはきっと、極度の緊張からだな。寒いならマフラーしてこれば良かったろ~?持ってたよな、確か。」
「……それは……。」
あのマフラーは…もうつけることはできないわ。
かといって、新しいものを買う気にもなれなかった。
「……なくしたので。」
「そっか。合格してたら新しいもの買ってやるよ。」
「……そうですね。ありがとうございます。」
いい機会かも…しれませんね。
「……お。見えてきた見えてきた。一歩、あそこだろう?」
「…………!」
沢山の人だかり、
時折…歓声が上がったり、
中には肩を下げる者もあり、
目を凝らして見ている者もアリ……。
「……。間違いありませんね。……それでは、いっぽ、行きマース!!」
「……健闘を祈る!!」
びしぃっと敬礼を決めて…、宏輔とアイコンタクトをとると。
その道を…真っ直ぐに歩いていった。