恋の飛沫
飛沫
 そのとき、何が起こったのか。

 夏帆(かほ)は思いきり驚いた顔で、宙に浮いた・・・・・・と思ったのは一瞬。
 すぐに冷たいモノに、全身を包まれた。

 ・・・・・・っばっしゃあぁ~~~ん!!

 派手な水飛沫と共に、これまた派手に上がる水音。
 そのときになってようやく、夏帆は自分がプールに落ちたのだ、と気がついた。

 むぐぐ、と慌てて息を止め、両手をばたばたさせる。
 焦っているためか、身体が言うことをきかない。

 予定外に潜ってしまったため、肺の中には、そう空気もない。
 あっという間に夏帆は酸欠状態になる。

 ますます焦ってもがくが、何故だか水面は近づかない。
 制服を着たままなので、思うように身体が動かないのだ。

 服を着たまま泳ぐのは、想像以上に難しい。
 夏帆は水の中でパニックになった。
 こういう状態が、一番危険だ。
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