恋の飛沫
 がぼっと口から、命を繋ぐ空気の玉が出ていく。

 気が遠のいたが、その瞬間、微かに水音を聞いたような。
 そしてすぐに、ぐいっと力強く引っ張られる。

 最早抵抗する力もなく、夏帆は易々と引っ張られ---いとも簡単に、水面に引き上げられた。

「~~~っげほっ!!」

 水から顔を出した瞬間、夏帆は咳き込んだ。
 幸い水を飲む前に引き上げられた。

 げほげほとひとしきり噎(む)せ、少し落ち着いてから、俯いた視界に映るものに気づく。

 己の身体をしっかりと抱いている、腕。
 ほぼ密着状態の半身からは、明らかに女の人の身体ではあり得ない硬さを感じる。
 案の定、目の前の水面の中に見える、己の下半身のすぐ横にあるのは、男物の制服。

 夏帆は恐る恐る顔を上げた。
 そして、己を抱えている人物と、ばっちり目が合う。
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