愛のガチ契約
すっ…

飴子のおばあちゃんに買ってもらった年期入りのローファーが勢いと共に落ちていく。


鞠はもうだめだと顔を背ける。

優希はおもしろげに目を見開いた。





ぱしっ……


「筋はいぃ…が。
俺の靴、幾らしていると思っている?」


「おぃ…やるな金持ち眼鏡…」

優希は感心してけたけた笑い出した。


飯田は座る直前の飴子を下から見上げ、
フッと挑戦的ともとれる目で飴子を見つめた。



「…う。」


「到底、お前のおこづかいとやらでは弁償もできないぜ…」


ニヤリと再び笑う飯田という金持ち。



「…んなもん、知るかぁ!!」

ドスンと飴子は腰を下ろすとパシンと自分の足首を掴む飯田の手を払う。




「ぉいぉい…
この俺の手を払うなんて上等じゃねえか」

「何よ、あんたは普通の人間だろうが」





「飴子、口を謹んで!」


「……へ?まり。。ちゃん?」


鞠は普段冷静を保っていて怒鳴ることなんて滅多にない。
飴子と優希も数えるくらいしか今までに見たことはない。




「この方はあの飯田商事の御曹司、
あの飯田家の息子さんよ」






「「はぁっ?!」」


飴子とそれにつられ優希もほぼ同時に声を合わせる。


「フン、やっとわかったか。
この俺の正体が」

飯田はいきなり3人を見下げる目で見つめて暑苦しそうに自分のネクタイを少しゆるめた。



「失礼致します。坊ちゃま、お客様方。
只今飯田邸に入りました。」

天井に付けられた小さいスピーカーから蓮見の声が聞こえた。



一体、何分もめていたんだろう…



飴子は背中にちょっとした汗を感じた。

窓の外は手入れの行き届いた素晴らしい庭が飴子たちと主人を向かい入れた。
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