先生に会いたい
第8章

新たな道




また春を迎えた。

満開の桜が咲き誇る中、私は高校生になった。



県内有数の進学校とだけあって、授業についていくのが大変だった。

新しい環境に慣れるまで、随分時間がかかり、疲れがたまった。

それでも、やっぱり高校生活は楽しかった。




「行ってきま~す!」


いつも通りの朝。


耳にヘッドホンをし、自転車にまたがる。

再生ボタンを押すと流れる…あの曲。


先生のことは未だに忘れることが出来ていない。



また遊びに来ればいいって言ってくれた先生。

でも、先生はもうあの学校にはいない。


離任しちゃったんだ。

もっと遠くへ行っちゃった。




先生が髪を切ったとき。

元気がないとき。

誰よりも1番に気付いた私。



新しい環境で疲れてない?

風邪ひいてない?

元気でいるの?


今はそれさえも分からない。



どんどん先生は、知らない先生になっていく。

私もどんどん、先生の知らない私になっていく。



しばらく連絡を取り続けていたが、すっかり途絶えてしまった。



先生から借りたCDだけが2人を繋いだ。

このCDをいつか返せる日が来ますように…。


毎晩星空に願った。




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