先生に会いたい
「桜、どした?元気ねーな。分かんない問題でもあった?」
ボーっとして、溜め息ばかりついている私に、先生が声をかけてきてくれた。
いつもとは違う真剣な顔で、私の顔を覗き込む。
先生が呼ぶ私の名前と、先生の『どした?』にまたキュンとする。
だめだよ、桜。
この人は、好きになっちゃいけない人。
誰かが私に囁く。
私は、空元気を振りまいた。
「先生、奥さんいたんだね!知らなかったぁ~!子供もいるの?」
言ってすぐに後悔した。
子供や奥さんの話をしただけで、一瞬で満面の笑みになった先生。
何となく、答えなんて聞かなくても分かっていたのに……。
先生の口から聞きたくなかった。
「お~!いるよ、2人!桜知らなかったの!?」
先生の親バカっぷりは、校内でも結構有名だったみたい。
本当に先生に興味がなかったから、何も知らなかった。
羨ましいな……奥さん。
いいな。
こんなにかっこよくて、優しくて、頼りになる人が旦那さんだなんて。
きっと……
ううん、絶対良いパパなんだろうな。
子供に肩車とかしてあげてるんだろうな。
先生が生徒のことをみんな名前で呼ぶのは、子供がいるからなのかもしれない。
ショックだけど、納得。
私も先生みたいな人と結婚したい。
でも、先生みたいな人とか、先生よりいい人なんて、この世にいる?