先生に会いたい
「お前、最近変だよな?元気ねぇし、昼休みもパッタリ来なくなったし、俺のこと避けてんのか?俺がすげー心配してんの、分かってる?」
先生は、恥ずかしがり屋で照れ屋だから、いつも目を合わせてくれない。
すぐに目をそらすんだ。
なのに、今日は絶対に私の顔から目をそらさない。
先生は真剣だ。
私は下を向いて、大きく首を横に振った。
「じゃあ何だよ?何があった?俺をそんなに信用できない?」
先生がここまで私のことを気にかけて、心配してくれているなんて思わなかった。
もう、これ以上先生に心配をかけたくない。
私は愛梨の名前を伏せて、先生に話すことにした。
「……先生のことを、本当に好きな子がいるの。私その子と仲いいし、協力してって言われたから、先生に会いに行くことも、仲良くすることも出来なくなっちゃって……」
今まで我慢してきた分、涙が溢れ出た。
先生は私に近寄り、私の頭を引き寄せた。
「そっか。桜も悩んでたんだな……。そいつが誰なのかは大体分かってる。でも、生徒と教師だからさ。俺、お前にあげた赤ペンをあいつが持ってるの見て、かなり傷ついたんだぞぉ……」
顔を上げて、先生を見た。
先生は無理して笑顔をつくり、私に微笑んだ。
その笑顔があまりにも寂しそうで、また先生の胸へ飛び込んだ。
そのとき先生がどんな表情をしていたか、何を思っていたかは分からないけれど、先生も私を強く抱きしめ返してくれた。
会議室の窓から見える青空だけが、私たちを見ていた。