先生に会いたい
「桜、夏休みなのに何処も行ってないだろ!最近受験勉強頑張ってるから、ご褒美に海連れてってやるよ!みんなには秘密な!」
いたずらっ子のように笑う先生。
先生の“秘密”という言葉に、いけないことをしているようでドキドキした。
夏休みは毎年、友達と遊んだ記憶しかない。
お母さんは、夏休みも仕事で忙しい。
でも、私のためだから『どこか連れて行って』なんて、わがままは言えない。
久しぶりに乗った先生の車は、何も変わっていなかった。
唯一変わっていたものと言えば、かかっている音楽くらい。
それは今年の春に流行った、私の好きな桜ソングだった。
「私、この歌好き!」
「お!マジで?俺もかなり好き!また今度貸してやるよ!桜に来年、桜咲くといいな!」
「今の、ダジャレ?」
「シャレじゃねぇよ!真剣に言ったの!」
「あはは!どうもありがとう!」
車内はアップテンポな曲に負けないくらい明るかった。
先生といると本当に楽しい。