俺と初めての恋愛をしよう
あまりにも長い時間を殻に閉じこもったまま生きて過ごしてきた。
それをいとも簡単に後藤が破り、今日子もまたその殻を打ち破った。
後藤との出会いは必然だったのか。
今日子の分岐点が今、ここにある。
どう転んで行くかわからないが、進まなければ止まっているだけだ。
今日子にも分かっていた。もう昔のような自分には戻りたくないと。

「俺の為に一人でいてくれた時間だ」
「ぷっ……」

今日子は思わずふきだした。
だが、後藤の顔は真剣だった。

「いつまでも一人でいるという確信はなかった。帰国が決まったとき、真っ先にお前に会いたかった。今日子をちゃんと見ている男なら、お前をすぐに好きになる。だから俺は焦った。だけど、お前は変わらずここにいた」

後藤の深い愛情を今日子は感じた。こんな自分を変えて、信じてくれている。それだけで後藤を信じることが出来る。
もしこの先何かあっても、この選択は後悔しないだろう。

「よろしくお願いします」

今日子はまた一歩踏み出した。
あんなに人との接触を避けていた今日子が、色々な段階を飛ばしていきなり上司と恋愛、同棲と女の人生を駆け上る。
急に始まった恋愛だが、上司と部下として出会った最初から、今日子のなかに後藤がいたのかもしれない。
無茶なことをいう後藤に、少し呆れつつ、目をゆっくりと閉じた。




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