俺と初めての恋愛をしよう
翌朝、今日子はいつものように起きて、朝食の支度をしていた。
勝手がまだ慣れていないが、贅沢な広さのキッチンで、今日子は満足だ。
後藤のマンションはキッチンが独立してあった。
カウンターキッチンでも、アイランドキッチンでもなく、ちゃんとドアで仕切られていた。
匂いが部屋中に漂うことがなく、実にいい。マンションは端にあり、さらにルーフバルコニーがある。キッチンは外を向いており、窓から景色が見られるのもまたいい。
今日も朝からいい天気だ。
まだ、完璧とは言えない食器やキッチン道具を駆使して、今日子は洋の朝食を作る。
大体仕上がったところで、後藤から声がかかる。

「今日子~!!」
「あ、は~い」

フキンで濡れた手を急いで拭いて、寝室に行く。
寝室のドアを開けると、スラックスを履いて立っていた後藤がいた。
見慣れない男性の身体に、目をそらしてしまう。

「おはようございます」
「おはよう、今日子、着させて」

後藤はワイシャツを持って手を伸ばし、ワイシャツをぶら下げるように今日子の前に下げた。

「着させる?」
「そう、着させて」
「は、はい」

今日子は素直に返事をするが、疑問の顔付きだ。
ぶら下がったワイシャツを受け取り、後藤の背中に回る。背中に回り首をかしげる。
何故着させなければならないのだろうかと、疑問に思う。自分の両親でさえもこんな場面は見たことがない。むしろ、母親が指示していることの方が多いはずだ。
後藤の腕にワイシャツの袖を通して、肩にかけると、前に回ってボタンを留める。

「あ、ちょっと……」

一生懸命にボタンを留める今日子の腰を、後藤は自分に引きつけ、腰を密着させる。
そんな後藤のいたずらにも懸命にボタンを留め、最後の一つを止め終える。

「はい、出来ました」
「ん……」

後藤は短く返事をすると、引きつけていた今日子の唇を奪う。

「おはようのキスだ」
「ご、ごはんの支度が出来ていますから」

甘い言葉が今日子の顔を赤くする。
恥ずかしい言葉を平気で言う後藤に、今日子はまだ慣れない。
そそくさと寝室を出て、キッチンへ戻る。

「今日はパンです。時間があったら、色々と買い出しに行ってまいります」
「ん、かまわないよ。いただきます」

自分の席にそれぞれ座り、朝食を食べる。
サラダ、スープ、食パン、ハムエッグ。至って変わったメニューではない。

「今日子、此処に生活費を入れてある。足らなくなったら言いなさい」
「え?」

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