俺と初めての恋愛をしよう
「当たり前よね、このアパートに何年住んでいるのよ」

気持ちが行ったり来たりする。
ここに落ち着いているからいけないのだ。
後藤との関係がだめになったとしても、一緒に暮らすことを選択しなかった方が、後悔する。今日子はアパートを出ると、不動産屋に向かった。
不動産屋では今月一杯という契約で、話がついた。
もう一度アパートに戻り、部屋を片付ける。
後藤が帰宅するまでに夕食の買い物、その他の必要な買い物も済まさなければならない。
不動産屋の帰り道、弁当を買って、昼食を済ませる。幸いなことに、物をあまり置かない今日子は、引っ越しも簡単そうだ。
業者は後藤が手配すると言っていたが、引っ越しまでに必要な物は、あらかじめボストンバッグに詰める。
部屋の時計を見ると、既に3時を過ぎていた。

「もうこんな時間?」
アパートに帰ることを許さない後藤だ。ボストンバッグには、下着類と、洋服を詰めマンションに戻ることにする。
小一時間離れているマンションとアパートを行き来すると、マンションに戻った時には、疲れてしまっていた。

「夕食は何にしようかしら」

手の込んだものはもうできない。でも、仕事を休んだ手前、総菜は買いたくない。
ボストンバッグから今度はトートバッグに持ち物を変え、今日子はスーパーに向かう。
必要なものを買うようにと言われたが、そんな時間はない。
毎日残業をしていた後藤だが、今日は定時で帰ってくる気がしている。
残された時間は1時間を切る。
スーパー内を目についた食材を手当たり次第にかごに入れ、帰ってからメニューを考える方法を取る。
重い調味料もとりあえず買い、両手いっぱいに食材を下げてマンションに戻った。



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