俺と初めての恋愛をしよう
翌日から、外で昼を済ませると決める。暑かったが意外とリフレッシュでき気持ちが良かったからだ。昨日と同じくアイスコーヒーをテイクアウトすると、自然と足が植草の元に向かっていた。
コンコン。ドアをノックすると中から、どうぞ。と声が返ってきた。
「失礼します」
今日子がドアを開けると、植草がお茶を飲んでいた。
「こんにちは」
「いらっしゃい。今日もアイスコーヒー?」
植草は診察用の椅子を今日子に差し出す。
「ありがとうございます。はい、アイスです」
「なるべく温かい飲み物を飲んだほうがいいわ。クーラーで体が冷えているから」
「はい。分かりました」
お茶を一口飲み、植草が今日子に聞く。
「林さんは、お休みの日は何をして過ごすの?」
「一週間分の食材の買い出しに行って、家でテレビを見たり、借りてきたDVDを見たり、本を読んだりです」
「お友達と買い物に出かけたりとかは?」
「私に友達はいません。一人が好きなんです」
「全く? 一人も?」
「ええ」
「じゃ、私はラッキーね。林さんのお友達第一号だから」
「えっ!?」
びっくりして、目を見開いた。
「私も此処にいるでしょ?元の医師仲間とはすれ違いで今は全く連絡を取り合っていないのよ。ママ友とは話が合わないし……。良かったわ。林さんがいてくれて」
「そ、そんな。私はつまらない女なので、友達でいても良いことなんてありませんよ?バカにされるだけです」
友達はそんなに簡単に「友達」となるのだろうか。今日子のことを知る前になるものだろうか。
友達が欲しいなどと言う感情はもう分からないくらい遥か昔に置いてきた。
それこそ、配線、修理に至る細かいことまで、誰かやってくれないだろうか。とも思ったことはない。
まるで、地球上に今日子という人間が一人しかいないと錯覚するくらいに一人でなんでもやってきた。
表情に染みついた作り笑いが、血の気が引くように、今日子の顔から消えていく。
「ねえ、林さん。今までで楽しかった思い出ってある?」
「考えたことはないですが、一人時間が楽しいと言えば楽しいですね。修学旅行しか旅行はしたことがないし、海も行かない……遊園地や動物園、映画館、キャンプ、登山、うーん、マッサージ、カルチャーセンター、合コン、スポーツクラブやエステ。多分もっといろいろな遊びがあると思いますが、全部中学時代から行ったり見たりしていません。人目に付くのが嫌なんです。興味もないです」
人との接触を嫌っているはずの今日子だが、植草からみれば、人恋しくて仕方がないと感じる。植草の問いかけに、単語で返すことなく、かなりおしゃべりをする。根はとてもしゃべりたいのではないかと、植草は推察した。
今日子は植草がそんなことを感じ取っているとは知らず、自分で言ったことに思わず笑ってしまった。
口に出して言ったのは初めてだ。こんなにも今日子は経験していないことがあったのか。
作り変えたら、全部、経験しよう。楽しみが増えた。
「林さん……。あなた」
「あ、先生時間です。失礼します。また」
今日子はそそくさと椅子から立ち上がり出ていった。
残された植草は、林がどんな人生を送ってきたのか想像がつかないほど深い悲しみにあるのだと悟った。
少し考えた後、後藤に社内メールを送った。
コンコン。ドアをノックすると中から、どうぞ。と声が返ってきた。
「失礼します」
今日子がドアを開けると、植草がお茶を飲んでいた。
「こんにちは」
「いらっしゃい。今日もアイスコーヒー?」
植草は診察用の椅子を今日子に差し出す。
「ありがとうございます。はい、アイスです」
「なるべく温かい飲み物を飲んだほうがいいわ。クーラーで体が冷えているから」
「はい。分かりました」
お茶を一口飲み、植草が今日子に聞く。
「林さんは、お休みの日は何をして過ごすの?」
「一週間分の食材の買い出しに行って、家でテレビを見たり、借りてきたDVDを見たり、本を読んだりです」
「お友達と買い物に出かけたりとかは?」
「私に友達はいません。一人が好きなんです」
「全く? 一人も?」
「ええ」
「じゃ、私はラッキーね。林さんのお友達第一号だから」
「えっ!?」
びっくりして、目を見開いた。
「私も此処にいるでしょ?元の医師仲間とはすれ違いで今は全く連絡を取り合っていないのよ。ママ友とは話が合わないし……。良かったわ。林さんがいてくれて」
「そ、そんな。私はつまらない女なので、友達でいても良いことなんてありませんよ?バカにされるだけです」
友達はそんなに簡単に「友達」となるのだろうか。今日子のことを知る前になるものだろうか。
友達が欲しいなどと言う感情はもう分からないくらい遥か昔に置いてきた。
それこそ、配線、修理に至る細かいことまで、誰かやってくれないだろうか。とも思ったことはない。
まるで、地球上に今日子という人間が一人しかいないと錯覚するくらいに一人でなんでもやってきた。
表情に染みついた作り笑いが、血の気が引くように、今日子の顔から消えていく。
「ねえ、林さん。今までで楽しかった思い出ってある?」
「考えたことはないですが、一人時間が楽しいと言えば楽しいですね。修学旅行しか旅行はしたことがないし、海も行かない……遊園地や動物園、映画館、キャンプ、登山、うーん、マッサージ、カルチャーセンター、合コン、スポーツクラブやエステ。多分もっといろいろな遊びがあると思いますが、全部中学時代から行ったり見たりしていません。人目に付くのが嫌なんです。興味もないです」
人との接触を嫌っているはずの今日子だが、植草からみれば、人恋しくて仕方がないと感じる。植草の問いかけに、単語で返すことなく、かなりおしゃべりをする。根はとてもしゃべりたいのではないかと、植草は推察した。
今日子は植草がそんなことを感じ取っているとは知らず、自分で言ったことに思わず笑ってしまった。
口に出して言ったのは初めてだ。こんなにも今日子は経験していないことがあったのか。
作り変えたら、全部、経験しよう。楽しみが増えた。
「林さん……。あなた」
「あ、先生時間です。失礼します。また」
今日子はそそくさと椅子から立ち上がり出ていった。
残された植草は、林がどんな人生を送ってきたのか想像がつかないほど深い悲しみにあるのだと悟った。
少し考えた後、後藤に社内メールを送った。