俺と初めての恋愛をしよう
「……中学の三年間、いじめにあいました。体を傷つけることはなく、全て言葉の暴力でした。顔に始まり、制服から出ているところ、体操着になれば、体操着から出ているところ、水泳の授業で水着になれば、出ている所だけではなく、水着で隠されている箇所全部、言葉のいじめの対象でした」
「なんてこと」
「体にはあだ名をつけ、顔のパーツ一つ一つにもあだ名をつけ、そのあだ名で呼ばれていました。名前で呼ばれたことはありませんでした」

今日子は淡々と人ごとのように自分の過去の話をした。いじめに関しては、悲しみは既になく、感情がない状態だ。いじめの経験は、今日子の現在と直結している。
その話をするときの今日子の目は、何処か遠くを見ている。もう一人の自分がいるような感覚にしていないと、生きては来られなかったのだ。

「だから、この暑い夏でも長袖とズボンなのね。海やプールに行かなかったのもこれが原因?」
「でも先生、お金を貯めるまでに医療が発達して殆どのところが整形手術できるようになったんです。とても希望が持てて、仕事の目標ができたんです。残業はすすんでしました。残業手当がでるから。でも髪だけは無理だから、作り変えた時のために手入れを怠りませんでした」

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