俺と初めての恋愛をしよう
そういって笑う今日子は、遠い目つきをしていた今日子とは違い、未来を語る希望に満ちていた。

「先生、ずっと人に陰口を言われたりまた、いじめにあわないようにするためにはどうしたと思いますか?」
「どうしたの?」
「いつも平常心で、空気のような存在になること、人と交わらないこと、そして笑うんです。作り笑い。これが私にできた防御法です」

植草は思わず今日子を抱きしめた。ここまでの深い傷だ。どうしたら手術を辞めさせることができるだろう。
全く罪悪感などなく、整形の希望のみが今日子をここまで生かしてきた。
今日子は、こんな傷を抱えていても、後藤を愛した。だが、自分の決めた目標を変えていない。
後藤しかいない。後藤が投げ出さず、今日子を愛し抜きこの傷を癒すしかない。

「先生?」
「林さん、今度私の行っている美容院に一緒に行きましょう。整形をする前にやっておかなければならないことがあるのよ?準備はちゃんとしなくちゃ」
「そうですね。先生に言われるまで気が付きませんでした。ありがとうございます。あっ! もう休憩が終わってしまいます。失礼しました、先生」

今日子は腕時計を見て、慌てて医務室を出ていった。
植草が今日子に提案したことは、とにかく、整形をしてしまう前に、美容院やファッション、そうだエステに連れて行って綺麗に、可愛らしく、愛らしくなって、皆が今日子の今の美しさを認めるように仕向けなければいけないと、咄嗟に思いついたことだった。そして何より、

「この顔に見えるって……」

今日子が自分の顔だと張り付けた顔を見る。確かに今日子が話している顔と一致している。だが、今日子の顔は全く違う。

「ここからね。この顔が見えているうちは、ダメよ、後藤さん」

植草は、このことを直ぐに後藤に知らせるメールを打った。
返信がくるかと思ったが後藤本人が医務室にきた。
ドアを乱暴に開けるなり怒鳴る。


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