俺と初めての恋愛をしよう
「そうね、多分、モテだすと思うから、せいぜいやきもちを焼くくらいかしら?」
「その作戦は却下だ」
「整形しちゃうわよ? 林さん、それでもいいの?」
「うっ」
「じゃ、決まりね。そうなるまで彼女を泊まらせたりして手を出さないでよ?まあ、週末は私が連れ出しちゃうから会えないけどね。」
「おい! それはないだろう!?」

残業の多い後藤が、ゆっくりと今日子を独り占めできる時間が週末なのだ。
その週末を楽しみに激務をこなしていると言っても過言ではない。
その楽しみを取られてしまうのだ、後藤は納得がいかない。

「いやよ。我慢しなさい」
「男を近づけさせるな、約束だぞ?」
「自分に自信がないの? 後藤君ともあろう人が、まあ考えておくわ」
「なっ? 頼む」
「仕方がないわね、日曜日はあなたに林さんを返してあげるわ」

 切れ者で、社では冷静に振る舞っている後藤が、今日子のこととなると、我を忘れて駆けつける。それも、手を合わせて、頼むというのだ。余程手に入れたかった女性なのだろう。
 植草は面白おかしく後藤をからかったあと、美容関係にいる友人と連絡をとる。土曜日に会う約束をして、次に美容院に予約をいれる。植草の行きつけだが、担当は男だ。女性の見る目と男性の見る目が違うから、きっと素敵に仕上げてくれると思った。
すぐに植草は、今日子に土曜日にショッピングをしようと誘った。当然、後藤の了解済だ。今日子には、待ち合わせ場所の連絡もした。女性と出かけるために待ち合わせをするのは初めてだ。なんだか、後藤と待ち合わせをするより楽しみでわくわくしている。食事したり、ウインドウショッピングをしたりして楽しそうだ。服は何を着て行こうかと今から悩んだ。後藤に報告をした方がいいのだろうか?しないとまた怒るだろう。
その時、後藤の携帯の番号やアドレスを全く知らなかったことに気が付いた。いつもラウンジで約束をしていたから、必要がなかったのだ。
連絡方法が社内メールしかなく、仕方なく自分の携帯番号とアドレス、土曜日の予定を報告した。すると間を置かず、後藤から返信がきた。番号とアドレス、それと土曜日に植草と別れたらマンションに来るようにと書いてあった。




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