俺と初めての恋愛をしよう
それから、今日子にとって待ちに待った土曜日が来た。
今日子は後藤との約束より、待ちわびていた。これは後藤には内緒にしておく。
銀座に10時に待ち合わせた。10分程早く着き、そわそわしながら植草を待っている。

「林さん、待った?」

白衣を脱いだ植草は大人の女性の色香があった。
いつもナチュラルメイクだが、きちんと化粧をして赤い口紅がとても良く似合う。

「先生、こんにちは」
「あら、素敵なワンピースね。とても良く似合っているわよ」

いろいろと悩んだ末、今日子は、後藤と初めてのデートできたワンピースを着てきた。

「先生、私、外出用の服がこれしかなくて……後で一緒に選んでもらえませんか?」
「ええ、もちろん、喜んで。さあ、先ずは、美容院からね。私の行きつけがあるの、とても腕のいい美容師なのよ? さあ、行きましょう」
「はい」

美容院に行く間にも、銀座の街並みを、ウインドウショッピングをしながら、これがかわいい、素敵、値段が高い。などと他愛無い話に胸が弾んだ。いつもこうした会話は心のなかでの独り言としておしゃべりをしてきた。相手がいるというのはなんと楽しいことだろうと、今日子は感じた。

「ここよ」

植草の行きつけという美容院は、ガラス張り窓が通りに面していて店内は白を基調としてシャンデリアなどがあり素敵なお店だった。

「いらっしゃいませ。植草様」

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