俺と初めての恋愛をしよう
「こんにちは。中島です。よろしくね」
「座りましょうか?」

席に座るとウエイターがメニューとお水を運んできた。

「さあ、何をたべましょうか?」

それぞれがメニューを開き選び始める。
洋食がメインのお店らしく、懐かしいメニューが載っていた。

「私は、このミックスグリルで」
「え!? 林さんもう決まったの? 早いわね」

びっくりした植草が今日子に言った。
今日子は以外にも即決タイプだった。これもその場に長居は無用と身に着けたものなのかもしれない。

「そ、そうですか? いつもこんな感じです」

他人と外食をしてこなくて、何にしようかと、迷う相手もいなかった為に、何とも思わなかったのだ。

「意外と、即断即決なタイプ?」
「考えたこともないですが……」

そういう所は男前なのかもしれない。植草と中島はあれやこれやと迷い、ようやく注文した。

「林さん、今日は食事が終わったら、まず、林さんご希望のショッピングよ。洋服や化粧日など冷やかしに行きましょう。五月はね、美容関係の仕事をしているの、だから良いアドバイスが聞けるわよ? それとお楽しみもね」
「はい」

お楽しみとはなんだろうと首を傾げた。
今日子は今まで倹約に努め、貯金してきたお金をおろし自分の為に使う。これまで無かったことだ。今日子は楽しみでしかたがなかった。

「肌が透き通るように白くてきめ細かいわね。それに、今どきいない和風美人。やりがいがあるわ」

 中島が釘付けになって肌をみる。流石に恥ずかしく、赤くなると、

「見て、ピンク色に赤くなるわ。最高ね。林さん、あなたみたいな方は貴重よ、自信もってね」
「恥ずかしいです」

 今日子は見られることに慣れていない。中島にそういわれ俯いてしまった。

「五月、林さんはね、これまで男性とお付き合いしたことがなくて、身体はすっかり大人でも気持ちは中学生の頃のままなの。だから、自分の気持ちにも気づかず恋煩いをしてたことも分からなかったのよ? 純情でとても素直なの」
「うん、うん。分かる。ひと目会ったときからそう感じたわ」

 中島は頷きを繰り返し、返事をする。

「でしょ?でも、最初に引っかかってしまったのが、おっさんの野獣なのよ」

 とても残念だと、深いため息交じりに植草が中島に言った。

「何、それ」
「先生……」

 おっさんを気にしているのに野獣まで付け加えられたら後藤はますますいじけてしまうのではないか。
この場に後藤はいないけれど、今日子は後藤をかばった。

「もう、束縛や嫉妬、全ての支配をしたがるの。林さんが傍にいないと狂ったように探すのよ? ウザったいわよね」
「それはそうね。その方はおいくつ?」

 中島は今日子に聞く。

「38歳です」
「あきらめなさい、その支配からは逃れられないわ。その歳では普通、もっと心広く受け止めるものなのに、それじゃあね」

中島も溜息をつき諦めの表情だ。



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