俺と初めての恋愛をしよう
「まだ何かあるんですか?」
「そう、私の本職は、メイクアップアーティストなの。これから私のアトリエに行って素敵にメイクをしてあげるわ。さあ行きましょう」
「はい」

 まだ、素敵な時間は続いていた。シンデレラの様に時間制限はない。どこまでも楽しむことはできるのだ。
銀座にあるというアトリエにつくと、色々な化粧品から放つ香りがした。
今日子はドラッグストアでいつも決まったものしか買わない。世の中にはこんなにも沢山の化粧品があるのだと、感心してしまった。

「さあ、林さん此処に座って?」

中島は美容院にあるようなイスに今日子を促した。

「はい」
「これから林さんは見違えるほど可愛くなるから、見ていてね。私の腕は超一流だから」
「お願いします」

中島は、今日子がしている化粧を落とし、基礎から始める。

「林さん、あなた、パーツがとても美しいわ」
「そんなことないです、私の顔なんか……」

いつもの今日子なら、醜いと言っていた。だが、鏡に映っている自分は、いつもの顔と違う。
まだ、整形をしていないのに、なぜなのだろう。こうしたいと思った顔がそこにある。
黙って自分の顔を見ている今日子を見て、中島と植草は目で会話をしている。変化を感じ取っているに違いない。

「メイクは基礎が大事。お顔に塗るのを面倒臭がると、すぐに崩れてしまうの、とくに夏はね」

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