俺と初めての恋愛をしよう
中島は、生徒に教えるように丁寧に解説をしながらメイクを進めて行った。
ファンデーションに行くまでにこんなに過程があるのだと勉強になった。目を閉じたり開けたり、はたまた、上を見たり下を見たり。中島の指示に従いながら顔を動かした。
いつも20分ほどで終わる自分の化粧だが、なんと1時間もかけてようやく終わった。
メイクが終わるまで中島は今日子に鏡を見せなかった。
今日子は、初めてメイク後の自分の顔を見る。
魔法の鏡だと思った。これは自分ではない。こんな顔ではないはずだ。
アトリエ中の鏡を見て回る。どの鏡をみても映る顔は同じだった。
「納得した?」
中島が言った。
「中島さん、これ本当に私ですか? 私の顔はこれじゃないはず……」
「違うわよ。あなたはとても愛らしく美人な顔つきをしているの。だからそれを生かしたメイクにしたのよ。特に目元は優しく仕上げたの」
鏡を見る今日子に顔を近づけ同じ鏡を見る。
「いい? 林さん。コンプレックスは誰にでもあるの。完璧な顔の人なんていないのよ?それを生かすのがメイクなのよ? 分かる?」
「……」
「世の中の馬鹿な男は、素顔がいいなんていうけれど、女性はメイクでいくらでも違う自分になれるの。素顔は大切な人だけに見せればいいわ」
「大切な人……」
「林さん、私はね子供の頃とてもお転婆だったの。ある日、鉄棒でスカート回りという遊びをしていて鉄棒から落ちてしまったの。それも顔から。何針も縫う怪我をしたの。大人になって化粧が出来るようになるまで、顔に大きな傷跡を見せて生活をしていたのよ? もちろん今でも消えていないの。そういう傷も消してくれて明るく前を見て生きることができるのよ、メイクは。だからこの職業を選んだの」
中島も自分の辛かった過去を語りながら思い出し涙ぐんだ。
ファンデーションに行くまでにこんなに過程があるのだと勉強になった。目を閉じたり開けたり、はたまた、上を見たり下を見たり。中島の指示に従いながら顔を動かした。
いつも20分ほどで終わる自分の化粧だが、なんと1時間もかけてようやく終わった。
メイクが終わるまで中島は今日子に鏡を見せなかった。
今日子は、初めてメイク後の自分の顔を見る。
魔法の鏡だと思った。これは自分ではない。こんな顔ではないはずだ。
アトリエ中の鏡を見て回る。どの鏡をみても映る顔は同じだった。
「納得した?」
中島が言った。
「中島さん、これ本当に私ですか? 私の顔はこれじゃないはず……」
「違うわよ。あなたはとても愛らしく美人な顔つきをしているの。だからそれを生かしたメイクにしたのよ。特に目元は優しく仕上げたの」
鏡を見る今日子に顔を近づけ同じ鏡を見る。
「いい? 林さん。コンプレックスは誰にでもあるの。完璧な顔の人なんていないのよ?それを生かすのがメイクなのよ? 分かる?」
「……」
「世の中の馬鹿な男は、素顔がいいなんていうけれど、女性はメイクでいくらでも違う自分になれるの。素顔は大切な人だけに見せればいいわ」
「大切な人……」
「林さん、私はね子供の頃とてもお転婆だったの。ある日、鉄棒でスカート回りという遊びをしていて鉄棒から落ちてしまったの。それも顔から。何針も縫う怪我をしたの。大人になって化粧が出来るようになるまで、顔に大きな傷跡を見せて生活をしていたのよ? もちろん今でも消えていないの。そういう傷も消してくれて明るく前を見て生きることができるのよ、メイクは。だからこの職業を選んだの」
中島も自分の辛かった過去を語りながら思い出し涙ぐんだ。