誰も信じない
私達は、夕日が見える場所で車を降りた。

ベンチに並んで座って、夕日を眺めながらおしゃべりをした。


「そうだ!橘さんを何て呼べばいい?『美穂』って呼んでいい?」


『美穂』


この名前を聞いた時、学を思い出してしまった。そしてあの頃苦しくて辛い思いをしたことや、愛理に裏切られた時のショックも思い出してしまった。


「どうかした?」


私は過去にまだ縛られていた。まだ過去を乗り越えていなかった。


「橘さん、何で泣いてるの?何かあった?話して。僕が全部聞くし受け止めるから、何もかも話していいよ。」





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