誰も信じない
携帯を変えること。



ただ番号やメアドを変えるんじゃない。

思い出が詰まった携帯とも『さよなら』をするの。



こうして私は、まるで晃一も一樹も存在していなかったかのように、思い出してしまう物を排除していった。



思い出すと、傷つけてしまった罪悪感で苦しくなるから。

あの時の晃一の顔を、声を思い出すから。

あの時の一樹の顔を、声を思い出すから。



ただ逃げてるだけってわかってる。

それでもいいの。早く苦しみから解放されたいから。



携帯を買い換えた。

新しい携帯には、晃一や一樹の思い出も面影も何にもない。



あんなに温もりを感じていたのに、こうして新しい携帯を手に取ると、何て冷たいの?何て無機質なの?








< 498 / 507 >

この作品をシェア

pagetop